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ご挨拶 形成外科 桑 原 理 充
形成外科は外科系診療科の中の一専門分野であります。機能回復とQOLの向上を目的とする専門外科です。形成外科は、再建外科と美容外科という大きな二つの部門に分かれます。
再建外科とは、先天異常、外傷、顔面骨骨折、変形、癌を手術した後の欠損や変形、皮膚の良性・悪性腫瘍、顔面神経麻痺、眼瞼下垂、褥瘡やあざといった、主に顔のけがや外見上の変形(色)、機能改善、組織の欠損に対する治療を行っています。これは狭い意味の形成外科で、一般に形成外科という場合は再建外科を指します。
一方、美容外科では手術などの治療により、正常である状態をより美しく、より質の高い生活を送る助けとなることを目標とする科です。当大学では残念ながら美容外科の診療は行っておりません。しかし形成外科と美容外科の間に明瞭な境界があるわけではなく、最近は大学病院でも、形成外科・美容外科といった標榜を掲げ、美容外科の治療を行っている施設もあります。
形成外科は、特定の臓器の病気を治療対象とする外科ではなく、全身のあらゆる部位の異常や形態変化を治療対象としていますので、他の診療科と多くの境界領域を持っています。当院では、皮膚科、耳鼻科、口腔外科の腫瘍切除後の再建の治療を行うことが多いです。
私自身医師になり、形成外科研修に入って初めて知ったことですが、形成外科の治療は手術がゴールではなく、スタートであるということでした。それも、手術を数回に分けて行わなければいけないことも多いという不思議なことがいっぱいでした。傷が本当に落ち着くことが一つのゴールであると思いますが、これには早い方で3ヶ月、遅い方で10年以上、さらにはもっとかかる方もいらっしゃいます。少ない入院期間、外来通院期間となるようにこころがけていますが、傷が少しでも早く、良く、きれいになるように、不都合な点を少しでも早く見つけて対策をとることが大切です。
外来手術でも手術後に運動、仕事に制限が必要であることが多いです。出血斑、腫れなどを生じることも多く人前に出にくいなど、なにかと不自由なことも多いです。無事に糸抜きが済んだあとも、傷に緊張がかからないようにテープを貼ってもらう指導をして、一ヶ月後ぐらいにもう一度傷を見せてもらいます。なかにはこのころ傷が赤く盛り上がったりする、傷が突っ張って困るといった不都合を生じることがあります。このような傷が落ち着くまで、本当に長い期間おつきあいすることもあります。
縫い縮めてしまうことのできないほど広い範囲の皮膚欠損などに対して、一般的手術手技として皮膚移植、皮弁形成(欠損の隣の皮膚をずらして覆う)、遊離組織移植(欠損と遠く離れた場所から皮膚、皮下組織を血管付きで採取して、血管吻合を行う)などがあります。どのような術式を選択しても一長一短があります。しかも確実にきれいになるという方法はひとつもありません。いくつかの術式が選択可能という場合、裏を返せば、どれを選択してもきれいにならないということになります。
皮膚移植では、そもそも生着しない可能性や、術後、色素沈着や、移植皮膚の収縮、皮膚を採取した場所の傷などが問題になります。皮弁形成の場合、覆うことのできる面積が場所により限られることが問題になりますし、傷の範囲も大きくなります。 遊離組織移植では、手術の侵襲が比較的大きいこと、つないだ血管が詰まってしまい、大変大きな再手術が必要になることなどが挙げられます。治療後のイメージを一生懸命伝えようとしていますが、うまく伝えきれないことも多いです。 形成外科の治療に大きな期待を抱いていただいている患者さんも多く、その期待に応えようと日々がんばっております。しかしながら、手術後の傷跡の受け止め方は患者さんによって大きく異なります。同じような治療で、同じように治った数人の患者さんがいらした場合、こんなことなら手術を受けなかった方がましだと評価される方から、こんなにきれいに治って信じられないと評価される方までざまざまです。
形成外科で治療を受けた方々が、笑顔で再び社会生活に復帰してゆく姿を見ることが、形成外科を専門とするわたしたちの最高の喜びです。
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対象となる疾患
- 皮膚軟部組織外科
皮膚良性腫瘍、基底細胞癌・扁平上皮癌・悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍、血管腫・血管奇形、熱傷 - 頭蓋顎顔面外科
先天性顔面形態異常、眼瞼先天異常、顔面神経麻痺、頭部・顔面・頭頸部再建、顔面骨骨折 - 体幹部再建
ブレストサージャリー:胸壁欠損、腹壁欠損、腹壁瘢痕ヘルニア、乳房再建
- 皮膚軟部組織外科
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医師
部長 桑原 理充
助教 萬木 聡
医員 今井 啓介、山中 佑次、佐々木智賀子、上村 梨世、原田 雅幸、金川 紗央理、
岡﨑 秀昭、河勝 雅行、中野 秀雪